岡野町地区に伝わる伝説[柳郷の伝説]

大山崩れと大滝不動

むかし、いつの頃かはさだかではありませんが、岡野町の大滝というところに大きな山崩れがおきたそうです。ここで崩れた土が下の谷間に押し出され、崩れた山は急な崖となり、恐ろしい程の風景に人々は近寄らなかったそうです。(この山崩れは、石のかたまりや泥、大木を運んで圧しすべり、大滝地内の「ヒョウ畑」と呼ぶ大平山の下の大沢口を堰き止めてしまいました。その地を「池の平」といって、今もその地名が残っています。)
谷のボコ地は、堰き止められた自然の土堤をつくり、谷川の水を満々と湛えて大沼池となり、何年か経つうちに大蛇が棲みつくようになってしまいました。
しかし、村人の心配はここに棲みついた大蛇ではなく、この自然にできた大沼の土堤はいつ崩れて流れ出すかわからないということでした。土堤が破れて大沼池の水が一気に流れ出た場合、岡野町の村はもとよりその下手に続く田畑や耕地までもがひとのみにされてしまう不安が絶えなかったのです。
そこで、村人はこの難を逃れるために、池の傍らに不動王を祀り仏の力でなんとかこの池の水が少なくなって水難が起きるようなことかないようにと祈りました。村人のひとりは「自分が犠牲になって村中が助かるのならば・・・」と不動王に祈りながら、自らその池に身を投じ、このことが天に通じてか、不動王のご利益か、それから池の水は徐々に引き始め、土堤が破れる心配はなくなっていきました。池の水はその後も減少し続け、ついには干上がってしまったそうです。
池の主であった大蛇は池に棲むことができなくなったので池を抜け出し、岡野町の馬場詰の田の中で臼のような胴体をさらして最期を遂げたといいます。

ちなみに、この山崩れのあった日は3月28日にあたり、不動王を祀る日として今でも神霊の加護と安泰を祈って参拝されています。

※上記の伝説は平成14年7月10日に発行された「柳郷の伝説」(著者:春日義一)より転載しました。

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